トンボは静的な姿勢制御のメカニズムを利用して「とんぼ返り」するという研究成果 34
回転 部門より
空中における動物の姿勢制御に関する研究は、ネコやアリなど飛行しない動物が主な対象となっており、これらの動物は落下時に体の軸を中心として横方向に回転(ロール)する。飛行する動物で研究されているハナアブも同様だが、トンボは縦方向に回転(ピッチ)することで姿勢制御を行う。
この仕組みを調べるため研究グループは20匹のタイリクアカネ(Sympetrum striolatum)に小さな磁石とモーショントラッキング用のマーカーを取り付け、磁力によりプラットフォームに貼り付けてからさまざまな角度で落下させてモーションキャプチャーとハイスピードカメラによる撮影を行った。その結果、トンボは意識の有無にかかわらず姿勢を正しい向き(背中を上)に修正したという。
死んだトンボでは姿勢制御が行われなかったが、羽の角度を意識のないトンボと同じ角度にしたところ、姿勢制御が行われるようになったそうだ。これはトンボが静的な姿勢制御の仕組みを備えることを示すが、生きているトンボと比べると落下方向を軸にした回転(ヨー)が多くみられることから、羽の角度だけでなく筋肉の緊張もかかわっていることを示唆するとのこと。
研究チームは今回の発見を小型ドローンなどの姿勢制御に活用できる可能性があるとみているようだ。今後はトンボの生体力学の研究を進め、静的な姿勢制御の仕組みが獲物の捕獲や障害物の回避などの戦略に与える影響を調べる計画とのことだ。